It doesn’t bother me to watch my legacy being upstaged by an operation that has saved many ballplayers careers. What does bother me is my name is now attached to something that affects more children than pro athletes.
多くの野球選手のキャリアを救ってきた1つの手術が私の業績の全てだと思われるのは苦にならない。気に障るのは、私の名前(がついている手術)が、今ではプロスポーツ選手よりも多くの子どもたちに影響を与えるものになっていることだ。Dr. Frank Jobe
トミージョン手術の考案者
かの大谷翔平選手も受けた肘の靭帯修復手術(通称・トミージョン手術)考案者の言葉をTEDxChicagoにて引用したのは、MLBシカゴホワイトソックスとNBAシカゴブルズのチームドクターを務めるDr. Nikhil Verma。自身の一般患者にもユースアスリートが増え続けているという同氏のスピーチ”A Dangerous Game: The Truth About Youth Sports”から要点を紹介します。
- 参加率が低下を続けるユーススポーツにおいて、70%の子どもが13歳までにスポーツからドロップアウトをしている
- 1年中同じスポーツだけをプレーする早期競技特化は複数のスポーツをプレーする子どもに比べスポーツ傷害を抱えるリスクが高く(81%)、その2/3が再受傷またはのちの人生においても症状をかかえる事になる
- 2004年には27歳だったトミージョン手術を受ける平均年齢が2017年には17歳まで若年化している‐中には13‐14歳の子どもも
- 早期競技特化が成長後のエリートパフォーマンスに必要とするデータはない
- 99%以上の子どもにとって、ユーススポーツは人生で次に起きる事への準備であるべき
①子どものスポーツ離れ
ユーススポーツの参加率が低下を続けるというデータがある一方で、ユースアスリート患者が増えているという現状がDr. Vermaを動かしたのではと推測します。
”62%もの子ども達がスポーツを辞めてしまっているのなら、私たちは何を間違えているのか?”という問いかけと共にAspen Instituteは”Don’t retire, kid(少年少女よ、引退するなかれ)”という活動を始めました。
↓の記事にも書いていますが、僕がこのHPを立ち上げるきっかけとなったのは、「バスケットボールは、もういいです」という小学6年生の言葉でした。
②&③早期競技特化とスポーツ傷害
思春期前から単一のスポーツを行ってきたユースアスリートは、そうでないアスリートにくらべてオーバーユースによるスポーツ傷害のリスクが1.5倍、総合的なスポーツ傷害のリスクが1.6倍高くなることが報告されています(Post et al., 2017)。↓の図のように専門化度合による傷害リスクを分ける考えもあります。
④早期競技特化≠成長後のエリートパフォーマンス
ニュージーランドでは、オリンピックや世界選手権を目指すアスリートのためのHigh Performanceプログラム(HPSNZ)に12のスポーツから合計400名を超えるアスリートが、そしてその1歩手前であるPre-HPというプログラムには645名のアスリートが在籍しています。Pre-HPアスリートに対する調査によって、彼・彼女らのマルチスポーツな背景が明らかになりました。
- 競技特化をした年齢:15歳5か月
- 参加していたスポーツの数:小学校時5.5・中学・高校時3.1・高校以降1.9
この結果は米国オリンピック選手(2000-2012)がユース時代に参加していた平均種目数(10歳以下3.11・10-14歳 2.99・15-18歳 2.20)に通じるものがあります。
⑤子どもにとってのユーススポーツとは
スポーツ傷害のリスクが高まり、早期競技特化がアドバンテージにならないというデータがあるにも関わらず、年間1.3‐1.5兆円($13‐15billion)規模のユーススポーツビジネスがこの偏ったユーススポーツを動かしていると指摘しています。競技する子どもがいなければビジネスが成り立たないからです。この不健全な過熱を続けるユーススポーツに拍車をかけるのは、スポーツが大学進学への”乗り物”になるという保護者の期待+学費の高沸があると言います。
しかし現実として、ユースアスリートの2%がDivision 1レベルでプレーし、さらにその2%がプロまたはオリンピックレベルに到達、さらに限られた人達がプロとしてのキャリアを構築できる‐故に”99%以上の子どもにとって、ユーススポーツは人生で次に起きる事への準備であるべき”とDr.Vermaは述べています。チームドクターとしてMLB・NBAアスリートと接している氏の言葉には説得力があります。
さいごに
This trend early specialization is it what we want or is it what the kids want, is it driven by the needs of our children or is it driven by the needs and interests of big business or outside industry. If the kids going to be successful in sports or frankly in anything in life doesn’t that drive really need to come from within? Ask yourself these questions because the health of our kids they are waiting for your answers.
早期競技特化の傾向は、私たちが望むことなのか、子供たちが望むことなのか、子供たちのニーズによってなのか、それとも大企業や外部産業のニーズや利益によってなのか、どちらなのでしょうか。もし子供たちがスポーツで、あるいは率直に言って人生において何かで成功しようとするならば、その原動力は内側から来る必要があるのではないでしょうか?自分に問いかけてください。子供たちの健康は、あなたの答えを待っているのですから。
Dr. Nikhil Verma