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子どもは複数スポーツを楽しく+遅い競技特化を

自分の子どもにはスポーツが上手になって欲しい、、、小さい時から一つのスポーツに集中した方が良いはずだ。と思っている親・保護者の方に是非読んで欲しい記事です。

部活文化がある日本ではトップアスリートも一つのスポーツに打ち込んできた傾向が強いですが、海外のデータは、別の事を示唆しています。

記事の信頼性

筆者の中山佑介(@yusuke_0323)は自身も2児の父親であり、米国で運動学の博士号を修めたのち、アスレティックトレーナ―としてNBAを含む日米のプロスポーツチーム・アスリートと関わってきました。

ニュージーランドのトップアスリートは、小学生の時は平均して5.5種目、中高生の時は3.1種目のスポーツに参加しています。アメリカのオリンピックアスリートも同様に、10歳以下の時は平均して3つ以上のスポーツをプレーしていたことが報告されています。

幼少期に複数のスポーツを行い、競技特化を遅らせる事は長期的なパフォーマンスにも+になると考えられています。スポーツ傷害や燃え尽き症候群の防止にも繋がるので、親・コーチの正しい知識が求められています。

子どものスポーツは「競争性を減らしより楽しく」という方針を打ち出したニュージーランド

Good practice at youth development level can enable both life-long participation in sport and future high-performance outcomes
(ユース育成時期の良い練習は、将来のハイパフォーマンスと人生を通したスポーツ参加の両方を実現できる)

‐Ken Lynch
HPSNZハイパフォーマンスアスリート育成マネージャー

ニュージーランドにおける子どものスポーツ離れにストップをかけるべく、Keep up with the playプロジェクトが2020年2月末に始まりました。

ニュージーランドにおけるユーススポーツ大変革の動きユーススポーツにおける競争性を減らし、楽しさの追求を強調した全国的なキャンペーンがニュージーランドで始まりました。その背景と活動を紹介します。...

この動きの発端となったのは、2019年9月に行われたニュージーランド5大スポーツと同国のスポーツを統括するSports NZによるStatement of intent(主旨書)へのサインでした。同書には以下の3つがメインテーマが掲げられています。

  • Less competitive (競争性を減らし)
  • More inclusive(より包括的で)
  • More fun(もっと楽しく)

そして、具体的には以下の6つの決意が表明されています。

  1. 競技レベルに関係なく、すべての子供達が質の高い経験が出来る事の保証
  2. ユーススポーツに関わるリーダー、コーチ、運営者、親・保護者の態度と行動の変化をリード
  3. 競技構造と育成機会の変化をサポートするリーダーシップの提供
  4. 国・地区代表トーナメントの在り方を見直してより多くの子供達にスキル発育の機会を保障する事を含む、10代を通して才能発掘を行いつつも視野を広く保つためのスポーツ団体・学校との共同作業
  5. 子供達の複数スポーツへの取り組みサポート
  6. オーバートレーニングとオーバーローディングに関するリスク認識の向上

「ユース時期の楽しいスポーツ参加=競技力の低下」という懸念

この方針に対して寄せられた懸念が、「(国際的な)競技力の低下」でした。そもそも、Sports NZの活動理念には、「より多くの若い人達がスポーツとレクリエーションに参加すること」「より多くの大人がスポーツとレクリエーションに参加すること」に加え、「国際大会で、より多くの勝者を輩出すること」があります。ここに対する、複数のスポーツを楽しくやって成長して、国際大会において特定の種目で勝てるのか?という懸念です。

これに対し、Sports NZは”Specializing later is not going to reduce New Zealand’s chances of winning on the world stage(より遅くに競技特化をすることは、ニュージーランドが国際大会で勝利する可能性を減らさない)”と断言しています。その根拠の一つをみてみましょう。

トップアスリートの幼少期における参加スポーツ種目数

ニュージーランドでは、オリンピックや世界選手権を目指すアスリートのためのHigh Performanceプログラム(HPSNZ)に12のスポーツから合計400名を超えるアスリートが、そしてその1歩手前であるPre-HPというプログラムには645名のアスリートが在籍しています。Pre-HPアスリートに対する調査によって、彼・彼女らのマルチスポーツな背景が明らかになりました。

  • 競技特化をした年齢:15歳5か月
  • 参加していたスポーツの数
    • 小学校時:5.5
    • 中学・高校時:3.1
    • 高校以降:1.9

この結果は、以前紹介した、Project Playのリクエストによって米国オリンピック協会が行った調査結果に類似しています。米国オリンピック選手(2000-2012)がユース時代に参加していた平均種目数は以下の通りです。

  • 10歳以下—3.11
  • 10-14 —2.99
  • 15-18 —2.20
  • 19-22 —1.27
  • 22- —1.31

また、Pre-HPアスリートへの同調査では、親とコーチが担う役割の大きさが改めて確認されました。スポーツをするモチベーションの要素トップ3として、そのスポーツへの愛、アクティブである事の楽しさ、そして親・保護者からのサポートを、よりよいパフォーマンスのための学びの3大リソースとして、コーチ、テクニカルサポートスタッフ、そして親・保護者が挙がっています。

まとめ

今回紹介したデータを含む根拠を元に、”より遅くに競技特化をすることは、ニュージーランドが国際大会で勝利する可能性を減らさない”そして”親とコーチからの正しいサポートが何よりも重要である”と前出のKen Lynch氏は述べています。

まさにLTADコンセプトそのものである同氏のコメントをもう一つ紹介して、このエントリーを締めようと思います。

“Quality coaching and administration at youth level should enable athletes to stay in sport and realise their potential, whether that’s about playing for enjoyment or aspiring to be a future high performance athlete.”
ユースレベルにおける質の良いコーチングと運営は、アスリートがスポーツを続け、娯楽の為にせよ、競技力を求めるにせよ、自分たちが持つポテンシャルに気づかせる事ができるはずだ。

タイガー・ウッズとジョーダン・スピース(早期競技特化とマルチスポーツ)トップアスリートの中には、その競技だけを徹底して続けた人もいれば、複数のスポーツをプレーしながら育った人もいます。そこに優劣はあるのでしょうか? 対照的な道を歩みながらも世界のトップレベルまで辿り着いた2人のゴルファーの話です。...

原文・参考記事:
https://sportnz.org.nz/news-and-events/media-releases-and-updates/articles/high-performance-sport-nz-endorses-youth-sport-campaign
https://www.aspenprojectplay.org/