早期競技特化・マルチスポーツ

子供がマルチスポーツに参加するメリット

マルチスポーツのメリット

前回のブログでは、子供がスポーツをするメリットを身体・社会・認知・精神衛生面など多角的に紹介しました。今回は、日本でも認識されてきている「マルチスポーツ」に子供が参加するメリットを紹介します。

マルチスポーツとは

「複数のスポーツに参加している事」です。海外のトップアスリートには、MLBとNFLの両方からドラフトされたアスリートもいて、複数のスポーツで高い競技力を誇る彼らをマルチスポーツアスリートと表現することもあります。

ユースのマルチスポーツには「スポーツサンプリング」の意識を

今記事のテーマは、彼らのように複数の競技でトップレベルを目指しましょうではなく、健全な発育の為のマルチスポーツです。そのためには、ユース時代の「マルチスポーツ」には「スポーツサンプリング」の意識が大切になります。聞きなれない言葉かもしれませんが、スーパーで試食をするイメージで気軽に色々なスポーツを体験することです。

後述しますが、トップアスリートになる事を見据えたパフォーマンス重視のマルチスポーツ参加は、メインスポーツへの長時間参加+他のスポーツという形に陥りやすく、これは早期競技特化に等しい怪我のリスクを抱えている事が報告されています。

1人1人に向いている、1人1人が好きなスポーツに出会える確率を高める事を意識したスポーツサンプリング的マルチスポーツ参加が、ユース期には大事だと考えます。スポーツには120もの種類があると言われています。

スポーツサンプリングについてのより詳しい情報は、こちらの記事をお読みください。

複数のスポーツ・運動に触れるメリット

身体の賢さを育む

”身体の賢さ”とも訳されるPhysical Literacyを育むためには、幼少期に多様な動作に触れる事が大切だとされており、下記のLTADモデルで示されている、Physical Literacyの発育は競技アスリートとしての成長の為にも、また生涯を通じて活動的な生活を送る為にも共通した土台と考えらえれています。

マルチスポーツ・スポーツサンプリングを通して育んだ身体の賢さは、人生を通じて活動的である事の土台になると考えられています。

燃え尽き症候群の防止

スポーツサンプリングは、ユーススポーツで問題となっている燃え尽き症候群のリスクを減らす事が報告されています(Aspen Institutes’ Project Play Research Belief)。スーパーの試食で食べ飽きる事はないことを考えれば、難しく考えなくても納得できるのではないでしょうか。

子供のスポーツ離れとその理由

毎年1/3の子供達がその年に参加していたスポーツを辞め、7割近い子供達が思春期前にスポーツから離れるというデータが報告されています。その理由のトップ3は

  1. コーチ・親からの非現実的な期待
  2. 楽しくなくなった
  3. 他の子供・アスリートに敵わない

です。

これらの理由の背景には勝利・競争主義のユーススポーツ文化があります。スポーツサンプリングを意識したマルチスポーツでは環境としての競争意識は低くなり、子供がスポーツから離れたくなる原因を作りにくくなると言えます。

怪我のリスク低下

思春期前から単一のスポーツを行ってきたユースアスリートは、そうでないアスリートにくらべてオーバーユースによるスポーツ傷害のリスクが1.5倍、総合的なスポーツ傷害のリスクが1.6倍高くなることが報告されています(Post et al., 2017)。スポーツサンプリングを行う事により、このリスクを回避する事ができます。しかし、前述のようなパフォーマンス志向によるマルチスポーツ(複数のスポーツ+1年間で8か月以上のメインスポーツ参加)は、オーバーユース傷害のリスクを1.7倍にする事が同研究で報告されているので注意が必要です。

まとめ

今記事では触れてない項目もありますが、以下の図を確認していただければと思います。

セミナー情報

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