8つの戦略

Play8: 怪我の予防に重点をおく

はじめに

Project Playが設定した8つの障壁。最後の一つがSafety Concerns among Parents:親からの安全面への心配です。そして、それに対する戦略として、Emphasize Prevention:怪我の予防に重点をおくが掲げられています。

この項目では急性の怪我、とくに脳震盪が当てられています。アメリカンフットボールが代表的な主流スポーツ・国民的娯楽であるアメリカにとって、ユーススポーツの脳震盪の予防と対処は大きな関心を集めています。

(脳震盪については直接触れていませんが)UCLAの元体操コーチで、同校を7度の全米優勝に導いたValorie Kondosは大人が自分達のエゴをユーススポーツから取り除く事で、子供達の不安や緊張を無くし、それが怪我の防止に繋がると説いています。

動画和訳

Play #8 Emphasize Prevention
怪我の予防に重点を置くこと。

This is for coaches, parents, caregivers, anybody who oversees the child’s development.
これは、コーチ、親、保護者、子供達の発達を見守る責任のある全ての人へのメッセージです。

Here we go, number 1 rule that we got to follow, you got to take our egos out of the game.
私たち大人が守るべき一番のルールは、自分達のエゴをユーススポーツから取り除く事です。

It’s not about us. It’s about our children.
(ユーススポーツの主人公は)私たちではなく、子供達です。

When we do everything we can, to reduce their stress, anxiety, to not give them fear of failure, guess what, we reduce their risk of getting injured.
私たちが子供達のストレスや不安を減らし、失敗への恐れを与えない出来る限りの事をする事で、子供達が怪我をするリスクを減少できます。

So we all need to support out children, by taking our egos out of the game.
大人のエゴをユーススポーツから取り除く事によって子供達のサポートをする必要があるのです。

補足情報

3分に1人の子供が、スポーツで受傷した脳震盪で救急処置室を訪れている

2013年に発表された報告(Game Changers: Stats, Stories and What Communities Are Doing to Protect Young Athlete)によると、1年間で135万人の12歳から17歳の子供が、スポーツ関係の怪我で救急処置室を訪れており、一番多くの診断は捻挫・肉離れ(451,480件)で、骨折(249,500件)、打ち身・擦過傷(210,640件)、そして脳震盪(163,670件)と続きます。脳震盪においては平均すると3分に1人という頻度・数に上るとの事です。また救急処置室で診察を受けたスポーツ関係の脳震盪受傷者の47%が12歳から15歳の年齢層でした。スポーツ別件数では、フットボールが275,050件で一番多く、バスケットボール、サッカー、野球と続いています。

ユーススポーツにおける脳震盪への対応:発見と対処から、予防へ

2014年、オバマ前大統領は、ユーススポーツにおける脳震盪を討議するサミット”Healthy Kids and Safe Sports Concussion Summit”をホワイトハウスで開きました(オバマ前大統領によるリマーク)。このサミットでは、脳震盪の発見と対処法を中心に多くの議論がされたといいます。そして今は、予防に焦点を当てる事も求められています。フットボールでは、タックルのテクニックなどの教育面も大切ですが、一番効力があるのはルールの変更だと考えられています。2018年、the Aspen Institute Sports & Society Programは、Future of Footballという討議会をホストし、14歳以下はタックル無しのフラッグフットボールがスタンダードになる事を推奨する ”What if…Flag Becomes the Standard Way of Playing Football Until High School?”という白書へと発展しました。今後の展開に注目です。

怪我の対応に関する教育を受けたことがあるコーチの割合

上記のような予防策をどれだけ講じても、スポーツから怪我のリスクを完全に取り除く事はできません。怪我が起きた際にアスレティックトレーナーをはじめとする専門家がいない場合、理想的では決してありませんが、コーチが対応・対処するケースが殆どです。Project Playが行った調査によると、怪我への対処法または予防法を学んだ事があるコーチの割合は以下ように報告されています。

  • CPR/基本的な応急処置:60%
  • 一般的な安全と怪我の予防:37%
  • 身体のコンディショニング:27%
  • 脳震盪への対応と処置:24%

前項目でユーススポーツにおける脳震盪の件数が高い事を考えると、コーチの2割強しか対応と処置を学んだ事がないというのは大きな問題として考えられています。Play 7(全てのコーチに教育を)で、アメリカにおいて650万人もいるユーススポーツのコーチの中で、効果的な動機付けテクニック(子供達と上手にコミュニケーションをとる能力)を学んだ事があるコーチは2割以下だという話がありましたが、同じレベルのようです。急性の怪我に対応できる専門家の裾野への普及と同時に、必要最低限の怪我の対応・対処法をコーチが積極的に学んでいく必要があります。日本の状況はどうなのでしょうか?

慢性の怪我への警報

脳震盪など、急性の怪我に関しての情報が中心となっていますが、オーバーユース・慢性の怪我への警報も忘れてはいません。アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会がProject Playの為に作った”5 ways to identify if your athlete is at risk for an overuse injury (ユースアスリートがオーバーユースによる怪我のリスク下にあるかを見つける5つの方法)”によると、以下の5項目に親・指導者は注意を払うべきです。

  1. 1年間の内、8か月以上一つのスポーツに参加している
  2. 高いボリュームの繰り返し動作が必要とされるスポーツに参加している
  3. 十分な休養と回復の時間を持たずに練習・試合をしている
  4. 似た部位の怪我を繰り返ししている
  5. そのスポーツから完全に休養した最後の日を子供自身が覚えていない

幾つ当てはまったら、という話ではありませんが、自分の子供がリスク下にあるかどうかを認識しているか・いないかでは観察する目と気づきに大きな差が出ると思います。

最後に

上記リンクのリマークで、オバマ前大統領は「スポーツを通して学んだ事は、大統領としての活動にも役に立っている」と述べています。素晴らしい人生の教材となるスポーツですが、怪我のリスクは常に付きまといます。コーチ・親が試合に勝つ・プロに育てるなどといった大人のエゴをユーススポーツから取り除き、トレーニングを含む教育やルール変更等を通して急性・慢性の怪我のリスクを最小限に抑える努力を続け、1人でも多くの子供達が人生を通して運動・スポーツを楽しむ環境が整っていくことを願います。

Project Playの8つの戦略はこの記事で最後ですが、より良い環境作りの小さな一助になると信じて、このブログも続けていこうと思います。

(原文/情報源:http://youthreport.projectplay.us/the-8-plays/emphasize-prevention)