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AAU/ユーススポーツへの警報 by LeBron James

NBAのスーパースター、LeBron Jamesが現在のAAU(Amateur Athletic Union、アメリカのアマチュアスポーツを統括する団体)の在り方を”Out of Control (収拾がつかなくなっている)”と公に警報を鳴らしました。大人にコントロールされていないピックアップゲームの大切さなどにも触れており、日本のユーススポーツ環境と照らし合わせて考えるきっかけになればと思い、引用を中心にまとめました。
(元記事:LeBron Rails Against ’Out of Control’ AAU Culture)

AAUとは

歴史と概要

アマチュアスポーツの発展とフィットネス向上を目的として1988年に設立され、現在では100,000人のボランティアを含む700,000人を超えるアスリートとコーチを抱える巨大な組織。バスケットボール、野球、フットボールなどのスポーツをはじめとする計34スポーツを統括していて、地域のチームはAAUに所属する事で同じ年代の選手を抱える他チームとの競争機会を得る。ユーススポーツの殆どの全米大会は、AAUの管轄化で執り行われている。1994年にはディズニーワールドリゾートと30年契約を結び、年間40以上のAAU全米大会はこのリゾートにある施設で開催される。
(写真:https://disneysportsnews.com/galleriesより)
(参考資料:https://en.wikipedia.org/wiki/Amateur_Athletic_Union)

ビジネスと勝利至上主義の介入ースポーツの早期単一化への影響

AAUの中には、ナイキやアディダスなどのブランドからスポンサーを受けるチームもあり、そのような強豪AAUチームに所属する事はそのスポーツで奨学金を得て大学へ進むことやプロアスリートになる為の道として考えらえるようになり、特定のAAUチームに所属するために州を跨いで引っ越しをするケースも稀ではない。このような風潮が、近年問題視されているEarly Specialization(スポーツの早期単一化)を後押ししているどころか、元凶とも考えられている。

また将来のクライアント候補に唾をつけておきたいエージェントがAAUチームに多額の”寄付”をし、コーチを通して選手との繋がりを作るなど、”Sports for All, Forever(スポーツを全ての人に、永遠に)”を掲げて始まったAAUにビジネスと勝利至上主義が介入されるようになる。

LeBron Jamesによる警報

自身が経験したAAUと息子達が経験しているAAUの違い

彼自身、いくつものAAUトーナメントを経験して成長してきているが、彼の12歳と14歳の息子が経験している今のAAUのシステムは当時から極端に変わってしまったといい、子供達の事を一番に考えていない事を指摘しています。

A lot of these tournaments don’t have the best interest of these kids, man. I see it. It’s like one time, they had to play a quarterfinal game, a semifinal game and a championship game starting at 9 a.m., and the championship game was at 12:30 p.m. Three games. I was like, ‘Oh, hell no.’ And my kids were dead tired. My kids were dead tired. This isn’t right. This is an issue,”
多くの(AAU)トーナメントは、子供の為を考えていない。以前、準々決勝、準決勝、決勝の3ゲームが午前9時から午後12時半(開始)で行われた。ありえない。俺の子供は完全に疲れ切っていた(2度繰り返す)。これはおかしい。問題なんだ。

LeBron James

プロになったばかりの選手達が、すでに何年ものプロキャリアを積んだかのような怪我を抱えていたり、スポーツ医学の進歩にも関わらず怪我の発生が増えている原因の一つとして、成長過程において同一スポーツで多すぎる走行距離を積んでしまっていること(too much millage on their bodyと表現)が考えられており、研究でも報告されています。その対抗策として、Project Playはスポーツサンプリングを推奨しています。

AAU coaches couldn’t give a damn about a kid and what his body is going through. It was a few tournaments where my kids—Bronny and Bryce—had five games in one day and that’s just f****ing out of control. That’s just too much.
AAUのコーチ達は子供達の事、子供達の身体の事なんか気にしていない。幾つかのトーナメントでは、俺の子供達は一日に5試合もプレーした。完全に収拾がつかなくなっている。やりすぎに他ならない。

LeBron James

Project Playの中でも何度も繰り返されているように、ユーススポーツから大人のエゴを取り除かなければなりません。

子供を守るのは、親

I’m very conscious for my own son because that’s all I can control, and if my son says he’s sore or he’s tired, he’s not playing.
俺は自分の息子(の身体)を強く気にかけている、それが自分がコントロールできる全ての事だからだ。もし彼が身体に痛みを抱えていたり、疲れていたら、彼はプレーしない(させない)。

LeBron James

システムが間違っているのならば、親が子供を守らなければなりません。1人1人の親がその意識を持つことで、救われる子供は増えてくるはずです。

史上最高とも言われるバスケットボール選手は、フットボールも高校最終年までプレー

LeBron Jamesが最初に好きになったスポーツもフットボールで、高校卒業までバスケットボールと兼業でプレーしていました。脳震盪を始めとする安全面の考慮から自分の息子達にはフットボールはさせていないそうですが、複数のスポーツをプレーする重要さを知っており、サッカーや野球など複数のスポーツを経験させているそうです。

バスケットボール選手としての一番の成長は、AAUではなくピックアップゲームから

自分の洗練された技術は、企画された年代別のトーナメントや特別なプライベートレッスンではなく、年上相手のピックアップゲームを通して発達したと言います。

You know how we got better as kids? We played against older kids because we knew if we lost, we had to wait a long-ass time before we got back on the court…That was our motivation. That pushed us. That’s how we got better.
俺たちが子供の頃、どうやって上手くなったと思う?年上の子供達を相手にしてたんだ。負ければ、また長い時間待たなければいけない(ピックアップゲームは勝ち残りが原則)。それがモチベーションだったんだ。それに後押しされて、上手くなったんだ。

LeBron James

大人にコントロールされていないピックアップゲームの大切さは、バスケットボールに限らず全てのスポーツにおいて再認識されるべきです。

最後に

世界で最高の影響力を持つアスリートの1人とも言えるLeBron Jamesの今回の発言は、国や環境を超えてユーススポーツの在り方を考え、問題意識を持ち、発言、行動するきっかけになると思い、本記事を書きました。まだまだ情報量のすくないこのHPですが、他の記事も合わせて読んでいただくと、今回の記事との繋がりも見えてくると思います。