8つの戦略

Play3(2): 色々なスポーツを積極的に体験する -Kobe Bryant

はじめに

僕がアメリカで生活していた時、クラスメイトや同僚と遊びでスポーツをする機会が多々ありました。すると、バスケットボール以外はからっきしな僕とは正反対に、野球だろうと、バレーボールだろうと、サッカーだろうと、それなりに出来る人の多さに驚いたものです。

部活で選んだスポーツはできるけれど、それ以外はできない。日本人の典型的なパターンではないでしょうか。そしてそれは近年、アメリカでも問題になってきています。

Project Playが設定した8つの障壁。その3つ目がSameness and Specialization(早期単一・専門化)です。そして、それに対する戦略として、Encourage Sport Sampling(色々なスポーツを積極的に体験する)が掲げられています。

スーパーマーケットで食品サンプルを試すように、複数のスポーツを試す事をスポーツサンプリングと呼びます。Cari Championのメッセージを紹介しましたが、Kobe Bryantのメッセージも非常に力強くインパクトがあったので、ここで紹介します。

動画和訳

Play #3 Encourage Sport Sampling. My advice to Parents and caregivers.
様々なスポーツを試す事。私からの、親・保護者へのアドバイスです。

When a kids gets older, it becomes even more important to play different sports, just for injury prevention. At an early age it just sparks imagination.
子供が大きくなった時には、怪我の予防の意味でより大切になります。幼い年齢の時は、創造性に火をつけます

And you don’t know what the kids gonna gravitate to, you don’t know.
その子供が、どのスポーツに惹かれるか。私たちには分かりません。分からないんです

You can’t force a kid to be a soccer player or a basketball player.
子供を無理やりサッカー選手にしたり、バスケットボール選手にしたりできません。

Just put them in a bunch of different sports and see what they gravitate to, see what they enjoy.
色々なスポーツを体験させて、何に惹かれるか、何を楽しむかを見るんです。

Let them spend time with their friends.
友達と時間を過ごさせてあげましょう。

補足情報

Diversity of Opportunity (機会の多様性)

もしかしたら、自分には体験したことがないスポーツの才能が秘められているのでは、と考えた事はありませんか?120種類もあるというスポーツ。その中の幾つを幼少期に限らず、人生を通して体験したでしょうか?僕自身を含め、両手で数えられる人が殆どだと思います。機会の多様性を子供たちに提供してあげる事は、才能がある、とまではいかなくとも、1人1人に向いている、なによりも1人1人が好きなスポーツに出会える確率を高めてくれます。それによって、より活動的な人生を送り易くなると考えられます。

オリンピック選手とSports Sampling

Project Playのリクエストによってアメリカのオリンピック協会が行った調査によると、71%の米国オリンピック選手(2000-2012)がユース時代に複数のスポーツに参加していた事が分かりました。平均種目数は以下の通りです。

  • 10歳以下—3.11
  • 10-14 —2.99
  • 15-18 —2.20
  • 19-22 —1.27
  • 22- —1.31

なぜこのような調査が行われたかというと、アメリカスポーツの強みであった複数のスポーツを体験する文化が失われてきているからです。2016年の調査では、6歳から12歳が参加しているスポーツの平均種目数は1.8、ユースアスリートの27%が1つのスポーツだけをプレーしているのが現状です。日本で同様の調査が行われたら、どのような結果になるでしょうか?

早期から単一(専門)のスポーツを行うことによる怪我のリスク

2017年にThe American Journal of Sports Medicineに記載された2000人を超えるユースアスリートを対象とした研究論文(Post et al.2017)によると、思春期前から単一のスポーツを行っているアスリートは、そうでないアスリートに比べて過去の怪我をレポートする傾向が高く(約1.6倍、P<001; OR 1.59; 95%CI 1.26-2.02)、オーバーユースの怪我においても同様に約1.5倍(P=.011; OR 1.45; 95%CI 1.07-1.99)と報告されています。

メインスポーツをプレーし過ぎる事による怪我のリスク

複数のスポーツをプレーしていても、メインスポーツに参加している時間が長すぎる事も、怪我のリスクを上げることになります。上記の論文では、1年間で8か月以上メインスポーツに参加しているユースアスリートは、上半身・下半身の両方において、オーバーユースの怪我をレポートする傾向が約1.7倍高い事を報告しています(P=.04; OR 1.68; 95%CI 1.06-2.80, P=.001; OR 1.66; 95%CI 1.22-2.30)。

スポーツの早期専門化をするメリット

上記の怪我のリスクや、ここでは詳しく触れませんでしたが燃え尽き症候群のリスクを負ってまで、単一のスポーツだけを子供に行わせるメリットはあるのでしょうか?

早くから専門的に取り組む事で、より高い競技力を得る事ができるはずだという考えは根強く残っていますが、そのリスクを提示している証拠が上記の論文を含め数多く存在する一方で、この考えをサポートする証拠は乏しいです。

まとめ

複数のスポーツを経験するSports Samplingの利点と、スポーツの早期専門化(Early Specialization)に付随するリスクを紹介しました。僕がアメリカ時代に接してきた100名を超えるNBAのアスリート達で、バスケットボール以外のスポーツ経験がない選手は一人もいませんでした。多くのスポーツを経験する中で、壊れる事なくプロのレベルでも続けられる身体になり、動作の多様性や状況判断も磨かれてきたのだと思います。

複数のスポーツを子供に経験させる事には、いくつかの壁があります。スポーツ環境が組織頼りになっているため、そのスポーツの少年団やクラブチームに参加しないと経験すらしにくいのが現状です。そこにかかる入会費、月会費、ユニフォーム代、送り迎え、、、大変です。滋賀レイクスターズは、シーズンスポーツスクールというユニークな取り組みを行っており、この活動がモデルとして全国に広がることを願います。

また、Play#2で謳われているように、自由な遊びを通して複数のスポーツが体験できる環境が整っていく事が望ましいと思います。

最後に

子供達のスポーツ環境は、親・保護者次第といえます。今子供達が参加しているスポーツの他に、何種類のスポーツを体験した事がありますか?そのスポーツから「休憩」したのはいつですか?子供達は楽しそうにやっていますか?痛みを抱えていませんか?

同一のスポーツを年中・数年に渡って続ける文化が日本にはあります。親・保護者の役割は、そこにブレーキをかけてあげる事だと思っています。数か月・数年休んでも、そのスポーツは無くなりません。むしろ、健康的により長く楽しめる事に繋がります。スポーツサンプリングの概念、是非広まって欲しいと思います。

(原文/情報源:http://youthreport.projectplay.us/the-8-plays/encourage-sport-sampling)