医療、ヘルスケア、スポーツに関わる専門家が学び・つながり・活躍するためのプラットフォームXPERT(https://xpert.link/)にて毎月掲載させていただいているコラムの転載記事です。
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コロナウイルス感染予防のための活動自粛が段々と緩和され、スポーツのある日常の足音が少しずつ聞こえてきました。ところが、この自粛期間中に、今まで続けてきたスポーツに対する興味関心が薄れたり、または無くなった子ども達もいるでしょう。今回のコラムが、そんな子を持つ親・保護者の方の参考になればと思います。
「何を求めているかを、子どもに聞く」
このコラムでも何度も紹介しているProject Playには、その活動開始と共に設定した8つの障壁(The 8 Challenges)と、それぞれの障壁に対する8つの戦略(The 8 Plays)があります。
その中でも第1の障壁として挙げられているのが「大人にコントロールされたユーススポーツ」であり、それに対する戦略として「何を求めているかを、子どもに聞く」が掲げられています。
故コービーブライアント氏はこの問題に対するの啓蒙コメントの中で、「幼少期のカギは、スポーツの基礎を教えながらも、子ども達が創造・想像し、スポーツが楽しくある自由と柔軟性を持たせることだ」と述べています。
大人が管理しすぎているユーススポーツ現場に対する問題提起ですが、子どものスポーツへの関わり方においても、同じことが言えるのではないでしょうか?
子どもが興味を失ったスポーツを大人が続けさせようとする中に、子どもの「自由と柔軟性」は存在しません。まず、目の前の自分の子が何を求めているのかを聞いてあげましょう。
スポーツ経験は、競技を変えても「サンクコスト」にはならない
サンクコストとは、回収ができなくなった投資費用の事です。続けてきたスポーツから離れたい・辞めたいと子どもが言った時に、それまで費やした送り迎えの時間やユニフォーム等の器具・用具等が頭に浮かぶのは自然な事です。
そして、それらが無駄になってしまうかのような錯覚に陥るかもしれませんが、そんなことはありません。幼少期に積んだ運動経験は、特定のスポーツから離れても、運動そのものから一時的に離れたとしても、その子供のフィジカルリテラシー(身体の賢さ)として蓄積されていて、一人ひとりが持つ運動能力が開花するための土台として存在し続けます。サンクコストにはなりません。
他のスポーツを経験するきっかけとして、ポジティブに捉える
特定のスポーツから離れる事が他のスポーツを経験するきっかけなれば、サンクコストにはならない理由として述べたフィジカルリテラシーの観点からは、むしろプラスになります。
幼少期に出来るだけ多くの動作を体験し、「動きの引き出し」を増やす事は、競技アスリートとしての道を歩んだ際の成長のためにも、何よりも生涯を通じて活動的な生活を送るためにも大切な土台になると考えられています。
幼少期に複数スポーツを体験する事の有益さは多数報告されていますが、日本ではまだまだ単一スポーツが主流です。これを機に、色々なスポーツをサンプルしてみてはいかがでしょうか。
スポーツサンプリングとは
複数スポーツを体験することを「スポーツサンプリング」と呼ぶことがあります。スーパーでの試食を思い浮かべてください。それと同じ事です。
何が自分に合っているかを、色々と試してみることは、子どものスポーツにおいても大切な姿勢です。
この点においても前出の故コービーブライアント氏は「その子供がどのスポーツに惹かれるか、私たちには分かりません。子どもを無理やりサッカー選手にしたり、バスケットボール選手にしたりできません。
色々なスポーツを体験させて、何に惹かれるか、何を楽しむかを観察するんです」と、シンプルかつ心に刺さる言葉を残しています。
アメリカのオリンピック協会が行った調査によると、7割以上の米国オリンピック選手がユース時代に複数のスポーツに参加していたことが分かっています。その平均種目数は、10歳以下の時は3種目以上です。
複数のスポーツを通してフィジカルリテラシーを育み、自分に合ったスポーツを見つけたことが、トップまで上り詰める力の一つになったのではないでしょうか。
大切なのは、スポーツを・身体を動かす事が好きでい続けること
スポーツがもたらす恩恵の殆どは、種目に特化したものではありません。
子どもの気持ちに向き合わずに特定のスポーツを続けさせようとして、スポーツそのものや身体を動かす事に対してネガティブなイメージを抱き、嫌いになってしまう事による損失は計り知れません。
スポーツ・運動には、人生を豊かにする要素に溢れています。社会全体が大きな転機を迎えている今だからこそ、子どもが何を求めているのかを聞き、そこに笑顔がある事を大切にしてほしいと思います。
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