8つの戦略

Play4: 地域リーグの再活性化

はじめに

僕の幼少期は、スポーツ少年団などのスポーツ教室には行くとしても週末で、週日の放課後は公園や校庭に集まって野球・サッカー・ドッジボール・刑泥・名前のない遊びをしている子供達が殆どでした。環境は大きく変わり、学校外でスポーツ=所属組織で練習が主流になっています。そして、それに伴う経済的な負担、そして子供だけでなく親・保護者のコミットメントも求められるようになっています。

Project Playが設定した8つの障壁。その4つ目がRising Costs, Commitment(高沸するコストと傾倒)です。そして、それに対する戦略として、Revitalize the In-town League (地域リーグの再活性化)が掲げられています。日本の事情とは必ずしも類似しませんが、同じ轍を踏まないように学ぶ事は大いにあると思います。MLBのスター外野手Cody Bellingerからのメッセージです。

動画和訳

Play 4: Revitalize the in-town league. My advice.
地域リーグの再活性化。私からのアドバイスです。

Parents, let your kids have fun.
親・保護者の皆さん、子供達にただ楽しませてあげましょう

Don’t be so anxious to have your kids travel all over the world to play the sport.
スポーツをプレーする為に全国を飛び回らなければと躍起にならないでください。

Let your kids play with friends. The most important thing is having fun in sports.
友達と遊ばせてあげましょう。一番大切なのは、スポーツを楽しむ事です。

Let your kid have fun, let them get better, let them learn.
楽しませてあげて、(自分達で)成長させてあげて、(自分達で)学ばせてあげましょう。

At the end of the day, It’s all about having fun.
結局は、楽しむ事が全てなのです。

補足情報

地域リーグ衰退の背景とその影響

地域のスポーツリーグは技術レベルやバックグラウンドが異なる子供達が同じフィールド・体育館に集まる場所として、アメリカのスポーツ参加において基盤をなしてきました。しかし、近年のトライアウト・遠征ベースのチーム(Traveling Team)結成の早期化によって、このようなリーグは格下のものという烙印を押されるようになってしまいました。また、選抜主義のチームに入れない子供達は自分は上手くない、なれないというメッセージを暗に受け取り、スポーツから離れるきっかけとなると考えられています。

「格下」という烙印、そして子供スポーツ人口の低下によって、地域リーグでプレーする子供の数が減少し、十分な人数を集める事ができずに地域リーグが衰退していく傾向にあります。地域リーグの衰退は、高額な費用を捻出できない家庭の子供達が参加できるリーグが無くなる事でもあり、機会の不平等化と子供の運動不足にも繋がっていきます。

スポーツ参加における経済格差

Fig. 10 Low-income families have fewer opportunities to participate in all sporting activities and are priced out of more expensive sports altogether. (Courtesy of Aspen Institute Project Play) [Citation]
(図:http://youthreport.projectplay.us/the-8-plays/revitalize-in-town-leaguesより)
赤字コメントの”Families that can afford more, play more(裕福な家庭ほど、よりプレーできる)”の通り、上の図は家庭の経済環境が子供のスポーツ参加に関与する一つの要因事を示しています。

Traveling teamに参加するためにかかるコストは、野球を例とすると平均で$3,700/年(約40万円/年)という報告があります。さらに、特別なトレーニングを希望する家族の出費は$8,000(約80万円)にも上るそうです。上のグラフの理由が見えてきます。

まとめ

ユーススポーツにおける勝利至上・選抜主義が主流になっていくと、子供達の自己評価やビジネスの要素が強く関わってきて、スポーツ離れや経済格差などのアメリカで起きている問題が発生すると考えられます。日本のユーススポーツは、入り口は広く構えられている印象があります。この良い所を維持しながら、冒頭のCody Bellingerのメッセージのように、まずは楽しむ事を大切にして、より多くの子供達が自分達で学び、成長できるような場所が増えていってほしいと思います。

(原文/情報源:http://youthreport.projectplay.us/the-8-plays/revitalize-in-town-leagues)