8つの戦略

Play5: 限られたスペースを有効利用する

(トップ画像:http://youthreport.projectplay.us/the-8-plays/think-smallより)

はじめに

Project Playが設定した8つの障壁。その5つ目がNot Enough Place to Play:遊ぶ場所・空間の制限です。そして、それに対する戦略として、Think Small:限られたスペースを有効利用するが掲げられています。トップ画像がこの考え方を良く表現していると思います。2人の子供だけが使える大きなコートよりも、スペースとルールを工夫して10人が使えるようにしたり、大きな運動施設を一つ作るのではなく、小さなコート・フィールドを複数作ったり、です。何かを作らなくても、既存のスペースを想像力によって別の場所にしてしますこともできます。Think Smallの紹介です。

スペースが限られている日本の事情に照らし合わせて考える事ができると思います。NBAのスーパースター、Kobe Bryantは、下記の動画の中で自分の幼少期の経験を含めながら、想像力を使って小さなスペースが持っている可能性を話しています。

動画和訳

Play number 5: Think small. My advice to parents and caregivers.
私からの親・保護者へのアドバイスです。

The thing about space is it’s all about imagination. And it might keep coming back to this word, but that’s what it is. That’s where the fun comes from
スペースについてですが、想像力が全てです。この言葉(想像力)が何度も出てくるかもしれませんが、これに尽きるます。そして、楽しみはここから生まれるのです。

You can take the smallest space in the world and imagine it being the Staple Center. You don’t need a big space.
とても小さな空間でも、想像力でステープルセンター(NBAロサンゼルス・レイカーズの本拠地でもある、全米屈指のイベントセンター)に変えてしまうんです。大きなスペースは必要ありません

That’s certainly when I played growing up in Philadelphia. I did not have much room especially in the winter time because it was snowing a lot and finding gym time was hard to come by so I had to make my basement work.
私がフィラデルフィアで育った時がそうでした。特に冬は雪が多く降る為にコートを見つけるのはとても難しかったです。なので、地下室をコートとしてなんとか使う必要がありました。

A little area and to me, that was like the Great Western Forum and that was it for me.
小さなスペースでしたが、私にとってはGreat Western Forum(カリフォルニアの大きなインドア施設)のようでした。

And that’s what parents and coaches can do.
そしてこれは親やコートが子供達のために出来る事です。

補足情報

費用面でもThink Small

上の動画では、小さな既存スペースを想像力でどう有効活用するか、という話がでました。Project PlayのHPでは、費用面からもこの考え方をすすめています。

億単位の費用がかかるようなフルサイズの施設ではなく、その数分の1のコストとスペースで作れるクォーターサイズのフィールドを提供していく事が、特に市街地では必要です。スペースの大きさは正規サイズではなくても、そこに上の動画でKobeが話をしたような想像力を働かす事ができれば、十分な”遊び”の空間になります。

US Soccer Foundation(アメリカサッカー基金)のミニピッチ普及活動

We want every child to have a safe place to play right in their neighborhood(安全に遊べる場所を、すべての子供達の近所に)”を掲げ、US Soccer Foundationは2026年までに1000ものミニピッチ(小さなサッカーコート)を創り出す活動をしています(HPはこちら)。僕が特に好きなのは、Play sports(スポーツ)ではなくPlay(遊び)という表現をしている所です。また、数少ないフルサイズではなくて、多くのミニピッチ。そこにThink Smallの概念を感じ取れます。

  • ロックできる倉庫付きで、ベンチ等も収容できるために遊ぶ側だけでなく、観る側も便利
  • カラフルな色やカスタムロゴ付き。コミュニティー感を強め、色々な用途での利用を促進
  • ハンディキャップがある人達にもアクセスしやすいゲートで、だれでも遊べる環境

など、様々な考慮がされており、30%の利用者はサッカー初心者という結果にも繋がっていると考えられます。また、導入されたコミュニティーからは、以下のフィードバックが。

  • コミュニティーがより活動的になった(98%)
  • コミュニティーがより安全になった(96%)
  • ミニピッチがコミュニティーの集いの場所として機能している(95%)

コミュニティーに根差したミニピッチだからこそ達成できた事だと思います。以下の写真は、一例で、左がBefore、右がAfterです。


(写真:https://ussoccerfoundation.org/programs/safe-places-to-play-mini-pitchesより)

スペースの大きさで制限を作っているのは誰

上記のUS Soccer Foundationのような団体と企業(Adidas, Target, etc)が力を合わせて、よりよい遊び・スポーツ環境が整備していく事は、とても素晴らしい事です。しかし、その数には限界があり、一番大切になってくるのは、スペースの大きさに捉われずに子供達が想像力を発揮して遊ぶ事です。そして、それを大人が阻害しない事です。

どんなサイズの空間でも、子供達に与えさせすれば、勝手にルールを決めて遊びが始まるはずです。Play 2でも指摘されていましたが、特にスポーツが関わってくると、そこに制限を持ち込んでしまうのは既存のルールに縛られた大人かもしれません。フィールド・コートの大きさ、ゴールの高さ・広さはこうでなければいけない、など。子供達にとっては、遊びにとっては、どうでもよい事です。

まとめ

Project PlayのPlaybook5、Think Smallを紹介しました。アメリカよりもスペースの制限がある日本では特に必要な考え方だと思います。想像力を使って、小さなスペースを有効活用し、子供がもっともっと遊べるように。