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子供の運動に大切なFワードたち

このツイート本文、Youth Physical Activity Is All About the “F-Words”(Faigenbuam et al. 2019)の要約記事です。世界的な問題となっている子供の運動不足を解消するためのアプローチとして、9つのFから始まるキーワードがお互いにどう関連しているのかを理解し、運動量やカロリー消費だけに着目するのではなく、ライフスタイルの変化の複雑さの理解し、運動体験の質にアプローチをしていくべきだ、という内容です。

はじめに

“F-Words”とは、上記ツイートでも少しだけ説明していますが、Fから始まる特定の罵りの言葉を指します。映画で”Fxxk you!” と聞いた事がある人も多いかと思います。人によっては日本語の「めっちゃ」のような感覚で使う事もあり、英語圏で(特にスポーツ界で)生活していると、日常的に耳に入ってきます。が、僕はどれだけ英語に慣れても、この類の言葉は絶対に口にしないようにしようと決めていました。

僕が一度だけ子供の前で発してしまったF word

長男がまだ3歳の時でした。アメリカのハイウェイを運転していた僕の視界に入ってきたのは、逆走してくる車。とっさに僕の口からでた言葉が、

「Fxxk!!」

でした。広い道路のお陰で事なきを得て肩を撫でおろした瞬間、

「Daddy,,,Fxxk!!

言葉の主は、後ろに座っていた長男(3)。僕の反応が面白かったのか、しばらく笑顔のFワードブームが続いてしまった思い出があります。

、、、、本題に移りましょう。

子供の運動量のガイドライン

冒頭に、「運動量やカロリー消費だけに着目するのではなく」と書きましたが、現行のガイドラインでは子供・青年は1日に合計60分の中・高強度の身体運動をする事が薦められています。

中高強度とは

運動生理学的には3-6+METSと解釈され、カロリー消費量がじっとしている時の3-6+倍、心拍数は最大心拍数の64から76%+まで上がる強度です。最大心拍数の求め方として220-年齢が広く浸透していますが、208-0.7x年齢がより正確と考えれています。

僕自身を例にすると、最大心拍数が182.8 (220-0.7×36)なので、その64-76%となる117から139+がターゲットとなる心拍数です。
とはいえ、心拍計を子供達に付けて運動させるべきかと言えば違います。そこで、目安として以下のような例が使われます。

  • 中強度:早歩き、ウォーターエアロビクス、時速16㎞以下のサイクリング、テニス(ダブルス)
  • 高強度:競歩、ジョギング・ランニング、テニス(シングルス)、エアロビクス、縄跳び

中強度の中でも早歩きからテニスのダブルスと幅が広いですが、一日を通して「合計」60分身体を動かしていればほぼ満たす事ができるガイドラインです。しかし、、、

ガイドラインを満たしている子供は25%以下という報告

アメリカの子供達の75%以上が簡単そうに見える上記のガイドラインを満たしていないと報告されています。理由として

事が挙げられています。

良い運動習慣から得られる利益は広く報告されており、疑いの余地はありません。運動不足による特に健康面での不利益も同様に、です。子供の時の運動習慣と、大人になってからの運動習慣の中・高強度の相関性も報告されています。

だから身体を動かしましょう!

というのが今までの取り組みでした。が、スマートフォンの浸透などによるライフスタイルの大きな変化や、このブログでも何度も取り上げているユーススポーツ環境の変化によって複雑化した問題に対するアプローチとしては不十分であり、「いずれ運動するようになるだろう」という楽観視もできない時代になりました。そこで紹介されたのが、9つのFワードたちです。

9つのFワードたち

説明↓(Faigenbuam et al. 2019)。

Family
家族
家族が運動の大切さを理解し、ロールモデルとして活発であること
Facilitator
舵取り役
運動習慣のチェックを小児科のスクリーニングに導入し、運動不足の子供は適切な運動指導ができる専門家に紹介するなどの対応をする
Facilities
施設
外遊びやスポーツなど常時身体を動かす機会があるように、学校や地域ベースの運動環境の改善をする
Force
基本的な力の発達が適切な動作の獲得に必要な事を理解し、優先事項として子供・青年に推奨する
Fitness
身体の健康
心肺代謝性・神経筋の発達を促すユースプログラムを実施する
Function
身体の機能
多様な基本的運動スキルを継続して発達できる環境を段階的に提供する
Fun
楽しさ
楽しさ、友達を作る事、新しい事を学ぶなど「質」にも焦点を当て、運動量だけのアプローチから脱却する
Feelings
感情
身体運動は家族・学校・地域の中で発達・維持・育むものという認識をする
Future
未来
子供達の長期的な健康・フィットネス・幸せを考えた身体運動に関する方針を教育・スポーツ・公共機関が確立する

これをすれば、という解決策はない

9つのFワードたちと、そしてそれぞれの説明を見ても具体的なプログラムや方針は示されていません。子供の運動不足という現代の問題の複雑さと、対策を考える時の方向性を示しているのがこの論文です。運動不足の子供に対して「外で遊びなさい!」ではライフスタイルの変化は起こせません。

子供に関わる大人の1人1人が、それぞれの立場からFワードを意識して行動に移す事が大切なのだと思います。Fの頭文字にこだわっているので、若干無理がある部分もあるかもしれませんが、意識付けという意味では役に立つ考え方と言えるでしょう。

セミナー情報

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