現状と提言

「体罰ではなく、暴行」-現状を変えるために

スポーツ現場における”体罰”や暴言が問題視されている中でも、日本バスケットボール協会裁定委員会委員をして「最悪の環境」と言わしめるのがミニバスケットボールです。地方協会による現状把握のためのアンケート結果を元に、調査拡大の必要性について書きました。バスケ以外の競技に興味がある方も、是非お読みください。

体罰ではなく、暴行

体罰は懲戒権をもっているもの(=教員)の行為であり,教員以外に体罰はない。すなわち,体罰ではなく暴行である。(もちろん,体罰も違法である。)

JBA裁定委員会委員(弁護士)

同意があれば許されるとなれば,子供は同意せざるを得なくなる。本人や保護者の同意があった場合でも,暴力は許されない行為である。

JBA裁定委員会委員(弁護士)

体罰ではなく、暴行。この事実に加え、罰せられる方にも原因があるという印象が付随する「体罰」という表現を廃止するべきです。また、同意の有無も関係ありません。

神奈川県バスケットボール協会の取り組み

上記の記述は、神奈川県バスケットボール協会が2018年から行っている「体罰等不適切な指導に関するアンケート調査」の2019年結果に掲載されていました。

2割の確率で”体罰”を受け、5割の確率で暴言を吐かれる現状が明らかに(2018年)

プロアスリートをはじめとする影響力の強い人達がSNS上で共有・発言した事によって2018年のアンケートは話題になり、他の県協会も後に続き、明らかになった現状改善への動きに繋がるのではという期待を抱きました。

2回目のアンケート

同協会が2019年に実施した2回目のアンケート結果、その一部をグラフにしました(数字は件数、アンケート全容はこちら) 。

2018年に比べ、回答数は685人から471人に減少している事もあり(その理由は?)、環境が改善・改悪したという判断をする事はできませんが、現状把握の重要な情報です。しかし、これは神奈川県だけの、もしくはその一部だけの状況でしょうか?
*質問の内容にも若干の変化がありました(2018年は体罰に髪の毛を掴む、耳をつかむ、も含まれていた)。

神奈川県協会の孤軍奮闘

冒頭に、”他の県協会も後に続き、明らかになった現状改善への動きに繋がるかと期待を抱きました”と書きましたが、2018年に第一回のアンケートが実施されてから、他の県協会が続いた事を確認する事はできませんでした(神奈川県のアンケート結果を紹介しながら暴言・”体罰”の撲滅を促す他県協会はありました)。大元(バスケットボールで言えば日本バスケットボール協会)が動く時ではないでしょうか。

現状把握が第一歩:大元の協会による調査が必要

大元主導の現状調査は、全国をカバーした回答は勿論、質問と分析の統一ができるという点でも利点があります。前出のJBA裁定委員会委員は「日本のスポーツの中で最悪の環境にあるのが,このミニバスケットボールを取り巻くものである」「子供たちに関わる全ての大人たちの協力のもと,断固たる決意で根絶することを目指すものであります。 」と明言しています。しかし、全国規模の現状把握をせずに根本的な改善に取り組めるとは思いません。①現状把握②対策③再評価のサイクルが必要です。このHPで何度も紹介しているアメリカのProject Playは、”State of Play 20XX”という名の全国的な調査と報告を毎年行っており、それに基づいて対策・活動を行っています。

人手・労力が問題なのであれば、連絡していただければ協力します。基礎ではありますが、博士論文を書くに必要とされる統計は学んでいます。

セミナー情報

4月4日に、ZOOMを使った以下のオンラインセミナーを開催します。興味・関心のある方は、こちらから詳細を確認してください。