遊び Free Play

自由な遊びが子どもにもたらす43の恩恵

少し前に投稿した「子どもがスポーツをするメリット」というタイトルの記事にて、スポーツが子どもにもたらす心身の健康における恩恵を説明しました。今回は、その一部を復習した後に、Free Play/Unstructured Play(自由な遊び)が子どもにもたらす43の恩恵を紹介します。元記事はNature Play QLDというサイトの”Unstructured Play: Essential not Optional(自由な遊び:オプションではなく不可欠なもの)”です。

アクティブな子どもは、より良い人生を歩む

”Active Kids Do Better in Life(活動的な子どもは、より良い人生を過ごす)”と題された上記の図(https://www.aspenprojectplay.org/youth-sports-factsより)には、活動的である事のメリットとして以下の点がまとめられています。

  • 肥満のリスクが1/10に
  • 学業面でのテストスコア~40%↑*
  • 喫煙・薬物・高リスクの性行為などのリスク↓*
  • 大学進学率15%↑*
  • 年収7-8%↑*
  • 健康維持費↓
  • 仕事での生産性↑*
  • 心臓疾患・脳卒中・ガン・糖尿病のリスク↓
  • 老後に障害を抱える率が1/3に

また、運動習慣のある母親の子どもは活動的である傾向がある(2倍!)とい記述に、親から始めようというメッセージも込められています。同時に、運動不足の子ども達が運動をしない親になると、、、という負の連鎖も示唆しています。

社会・情緒・認知・精神衛生面でのメリット

研究による裏付け

上記のリストで*をつけたのは、身体面以外のメリットです。2018年に発表されたBidzan-Blumaらによるシステマティックレビューはキーワードから選ばれた617件の研究論文の内、厳格な基準に沿って絞った58件を分析・統合した上で”Results suggest that engaging in sports in late childhood positively influences cognitive and emotional functions. (幼少期後半にスポーツに参加する事は、認知と情緒面においてポジティブな影響を与える)と結論付けられています。具体的にはattention(注意), thinking(思考), language(言語), learning(学習), memory(記憶)の5つのエリアにおいてです。

記事全文は↓から。

子供がスポーツをするメリットロコモティブシンドローム等、子供の運動機能不全が懸念される現代において、子供達がスポーツをするメリットを、国内外の研究論文からの情報を元にまとめました。「アクティブな子供は、より良い人生を歩む」その理由を説明しています。...

それでは、本題に入っていきましょう。

自由な遊びとは?

”Unstructured play”や”Free play”と表現され、文献や記事によって定義の差は若干ありますが、以下が共通項です。とてもシンプルです。

  • 特定の目的がないこと(Open ended)
  • 指導者・親を含む大人が介入していないこと
  • 楽しさが大前提にあること

子ども達が自分達でルールを決めた「~ごっこ」などはその代表例でしょう(これから紹介する恩恵の中にも、ロールプレイが何度も言及されています)。そしてこれらの環境で遊ぶことには、子どもの中の発想(imagination)想像(creativity)革新(innovation)が自然と伴い、下記の43の恩恵をもたらします。

自由な遊びが子どもにもたらす43の恩恵

人格・性格の形成において

  1. 自信と自尊心の向上
    身心を総動員した自由な遊びは、自然な形で自分の身体の探究と自主的な学びの機会となり、楽しみながら自信と自尊心の向上へと繋がります。(資料)
  2. 失敗からの素早い立ち直り
    代償が小さい自由な遊びの中での失敗は、健全な脳の発達に必要な感情の起伏を促し、そこからの立ち直りを学ぶ素晴らしい機会になります。(資料)
  3. ネガティブな経験や動揺を乗り越える経験
    「~ごっこ」などのロールプレイは、嫌な思いや衝突を認識して対処する機会を提供します。健全な認知発達の上で重要なこのプロセスを踏む事で、人生でネガティブな出来事に対処する能力を養います。(資料)
  4. 回復力・反発力の助成
    自由な遊びはアイデアの共有・自己抑制・力関係や仲間外れへの対処など、多くの社会スキルを学ぶ機会に溢れており、人生の糧になります。(資料)
  5. 幼少期のストレス・不安の低減
    大人による過保護は子どものストレスや不安の原因となる一方、自由な遊びは代償の小さな環境で自然とリスクを取る経験を積む事ができ、後の遊びでの不安やストレスを低減させます。(資料)(資料)
  6. 共感力の向上
    ロールプレイなどを通して、子どもは様々な状況に自分の身を置く事ができ、それに付随する感情を学ぶ事ができます。(資料)
  7. ものの見方・経験・不満を積極的に表現する機会
    言語化能力が伴わない時期において、自由な遊びは子どもが自分や周囲に対して感情や意見などを表現する窓口となります。(資料)
  8. 新しい興味関心を発見する機会
    プランのない状況では、子どもは暇を克服するために想像力を発揮します。これが子どもの興味関心を耕し、後の人生で情熱を傾ける事に繋がることもあるでしょう。(資料)
  9. 自己意識の養育
    遊びを通して過去に学んだ事を広げていくだけでも、人として成長する力を養う事ができます。問題解決能力やコミュニケーションを養う遊びは、自己意識の発達に重要な役割を果たします。(資料)
  10. 自然への敬意の養育
    屋外での自由な遊びは、母なる自然への理解と経緯を養う機会となります。(資料)
  11. 危険が潜む状況を認識して避けるトレーニング
    リスクを取る行動と、自己へのチャレンジを通して養われる危険察知能力は、幼少期の自由な遊びを通して養われると、多くの専門化は考えています。(資料)
  12. 探求心の刺激
    子どもだけの自由な遊びは、親から離れて自主性を伸ばす格好の機会になります。(資料)
  13. 怖れの軽減・克服
    遊びに付随するリスクを取る行動は、認知・行動セラピーのようでもあり、ストレス下においてネガティブな思考から離れる事によって不適応な行為を減らすことに繋がります。(資料)
  14. 大人の役割を練習する機会
    医者・警察官・宇宙飛行士でも何でも、自分の年齢以上の役割を演ずることによって成熟した社会の一員となる準備をする事ができます。(資料)
  15. 世界に対しての試行錯誤
    丸い石を四角い箱に敷き詰める事が難しいように、場合によっては対象を変える事はできず、自分のやり方を変えなければ問題は解決をしない事を学ぶ機会を提供します。(資料)
  16. 他人の視点・価値観を考慮する能力の拡張
    「~ごっこ」などのロールプレイからの一番の学びは、他者の視点から世界を見る事であり、日常を超えて精神的に文化や境界線を横断することもできます。(資料)(資料)

認知・精神面において

  1. 認知能力の発達
    遊びによる神経組織の増加、学習のアシスト、精神衛生への好影響が研究によって示唆されています。(資料)(資料)
  2. 判断能力の向上
    大人にとっては他愛のない遊びを通してでも、子ども達はいくつものオプションから選択する能力を磨いていて、判断能力を自主的に伸ばしています。(資料)(資料)
  3. 創造力の向上
    特に「~ごっこ」のようなロールプレイは、子ども達の創造力をサポートする事が示されています。この創造力にはつまらないタスクを楽しく・意味あるものに変え、世界に貢献をし、自分がコントロールする意識を育みます。(資料)(資料)
  4. 想像力の向上
    遊び心と想像力は手を取り合っていて、遊ぶ事を許されるほど、子どもは不可能を可能にする想像力を発揮する事ができます。(資料)
  5. 学習への準備をサポート
    子どもの学習能力をサポートするメカニズムは、幼少期の遊びを通しての他の子ども達との社会的関係がを通して得られるとも考えられており、自由な遊びはこの点において優れています。(資料)
  6. 問題解決能力の向上
    予測できない問題が起こる自由な遊びは、問題解決能力の向上に役に立ちます。(資料)
  7. 自由で柔軟な発想の促進
    1人で静かにでも、大勢で賑やかにでも、自由な遊びはルールや期待・時間の枠を取り払い、子どもが自分のために考える環境を提供します。自分たちが作った遊びは自分たちのコントロール下にあり、自由にユニークな形で変える事ができます。(資料)
  8. 言語発達の促進
    他の子どもとの関わりの中で、話し方を真似たりしながら語彙を増やし、スピーチ・言語発達を助けると考えられています。(資料)
  9. 大きさ・形・質感の概念を育成
    小さなブロックの上に大きなブロックを積み上げる事が難しかったり、丸い穴に四角いペグを合わせるのが難しいという経験を通して、子どもは大きさ・形・質感の概念を自分のものにしていきます。(資料)
  10. 注意を払う能力の強化
    小さな子どもが、互いに干渉しないで自分の遊びに集中している時、子ども達は自分の必要としている事に集中する能力を養っています。子どもが自主的に行っている事には同様の意味があるので推奨しましょう。(資料)(資料)

身体の成長において

  1. 身体活動と健康の促進
    身体を動かす事によって子ども達の筋骨や心肺機能は強くなります。自由な遊び、特に屋外での遊びはこの目的においても素晴らしいものです。(資料)
  2. 微細モータースキルの洗練
    図画工作などの指先を使った細かな遊びは、指のコントロールなどの微細モータースキルを磨き、字を書く際にも役に立ちます。(資料)
  3. 粗大モータースキルの発育
    多くの幼児は自由な遊びを通して基本的な動作スキルを身につけます。それをしていない子どもは、後の人生においても運動を避ける傾向がある。(資料)
  4. 器用さの発達
    生後3か月で、赤ちゃんは手を伸ばして物を掴もうとしたり動かそうとします。手を使う玩具を与える事は、元来備わっている物への興味を促し、子どもの器用さを発達させます。(資料)

社会心理面において

  1. 感情マネジメントの学習
    遊びを通して感情のぶつかりや表現を学ぶ事ができます。グループでの自然な遊びの中では、他の子ども達との交流が続くような感情表現が求められる故に、より良いコミュニケーションを学ぶことができます。(資料)(資料)(資料)
  2. 協調性の育成
    グループでの自由な遊びは、自分の行動が周りにも影響を与える事、それがネガティブな結果に繋がる事などを学ぶ機会になります。(資料)
  3. フィードバックに反応する能力の発達
    遊びを通して、似た年齢の子ども達からのインプットを受けながら、コミュニケーションや異なる考えへの対応の仕方を学びます。(資料)
  4. 衝突解決のための交渉のトレーニング
    遊びの中に内在する衝突。その対処を健全な方法で学ぶ機会となります。(資料)
  5. 自己擁護の促し
    自分の為に立ち上がる事を学ぶのは健全な大人になるために必要です。交渉が多い自由な遊びは、妥協の中にも自分が必要とする事を考慮に入れなければならない事を学ぶ機会になります。(資料)
  6. 友情の育成
    自由な遊びは健全な関係の構築を促します。特にロールプレイは大人と子どものコネクションを強くし、また子どもに帰属感を与えると言われています。(資料)
  7. 社交性を育成
    グループでの遊びは、後の人生で必要とされる社交性の土台となります。(資料)
  8. リーダー資質の助成
    大人がいない環境では、子ども達は自分達で教え合ったり、衝突に対処したり、公平さを保つようになり、リーダーシップが育まれます。(資料)
  9. 親との絆の強化
    親にとって、子どもとの自由な遊びは彼らの世界を知る素晴らしい機会です。子ども達は自分達の興味や得意な事を喜んで見せてくれ、楽しさを通じた絆はより強くなります。(資料)

学業面において

  1. 学業スキルの向上
    自由な遊びを通してのお互いに教え・教わる経験は、学業面へも好影響を与えます。運動を通しての認知機能や情報処理能力の向上は学業のパフォーマンスにも繋がります。(資料)
  2. 新しいステージへ進む準備
    幼稚園・小学校入学など新しいステージに進む際に、自由な遊びを通して育んだ社交性は、よりスムーズな移行に繋がります。(資料)
  3. 学校環境へのより良い順応
    子ども中心の自由な遊びによって育まれた認知・社交性・ふるまいは、学業における不安やストレスに対応する材料となります。(資料)(資料)
  4. 数の感覚の養育
    自由な遊びの中に数の概念は多く存在しており、学業の基本となる数字の理解に繋がります。(資料)

さいごに

自由な遊びがもたらす43もの恩恵、いかがだったでしょうか。大人が介入していないからこそ得られるものの多さに気が付いたかと思います。情報元の記事には、「Over-Scheduled and Over Entertained Kids(スケジュールされ過ぎ、楽しまされ過ぎている子ども達)」という項目があります。競争意識が強い子育ては、技術・知識獲得のための効率を求めて習い事中心になってしまいがちです。大人が介入しない自由な遊びによって、自由な遊びだからこそ、これだけの恩恵を受ける事ができるのですから、その時間と環境を提供してあげてはいかがでしょうか。

Let Kids Be Kids
(子どもは子どもらしくさせてあげる)

セミナー情報

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