Early Specialization(スポーツの早期競技特化)に対する警報は、アメリカの権威ある整形外科からも発せられています。
”Mayo Clinic Minute: Why Kids Shouldn’t Specialize in One Sport (メイヨークリニック:なぜ子供達は一つのスポーツに専門化するべきではないか)”
Mayo Clinicは昨年の最も優れた病院ランキングで全米1位に選ばれており、アメリカの歴代大統領や全世界の要人も診療を受けるような大病院で、スポーツ医学に関してもトップレベルです(ちなみにNBAのMinnesota TimberwolvesとWNBAのMinnesota Lynxの練習場はMayo Clinicの本部建物の中に立地しています)。
そのMayo Clinicの整形外科Dr. Anikar Chhabraは子供のスポーツ早期専門化が心身に与えかねる悪影響を危惧しています。動画の下に要点をまとめてあります。
以下が要点です。
- スポーツの早期専門化が、子供の怪我が蔓延している理由の大きな一つだと感じている
- 同じスポーツを幼少期から一年中、複数のチームでプレーしている子供は、身体を休めて回復する機会が与えられない(これはNBAレジェンドのKobe Bryantも全く同じ事を言っています)
- それが慢性の怪我や筋肉のインバランスに繋がったりしている
- 毎日ジムに行って、同じエクササイズ・筋トレを怪我をするまで続けているのと同じ
- 燃え尽き症候群や、スポーツそのものから離れてしまうリスクを助長している
- 患者とその親・保護者に伝えている予防法として、一つのスポーツから(1年の内)3か月間休み、その間は他のスポーツをすること
要点の一番最後にある「一つのスポーツから3か月間の休みをいれる」という考えを聞いたのは、これが初めてではありません。この考えは、同一のスポーツを一年間で8カ月以上プレーしている事がユースアスリートの怪我のリスク要因である事を報告している研究(Post, et al, 2017など)に基づいたものだと考えられます。他のリスク要因としては、種目を問わず、週16時間以上の組織された(=遊びでない)スポーツへの参加や、組織されたスポーツへの一週間の合計参加時間が年齢を超えている事などが挙げられています。過去記事で取り上げた、スポーツサンプリングの重要性や、自由な遊びの再評価と繋がっていきます。
どの位の頻度と量で単一スポーツに参加している場合に3か月のオフが必要とされるかは、明記されていません。他のリスク要因と重ねて考えると、例えば、週一回のスポーツ教室に参加している子供は、怪我のリスクを減らすためという理由で3か月のオフを入れる必要はないと僕は解釈しています。他のスポーツを経験させたり、自由な時間を増やすという理由でオフを入れるのはとても良い考えだと思います。
部活動のようにほぼ毎日プレーするような環境では、この3か月のオフという考え方は導入する価値が十分にあるはずです。部活動そのものを停止する必要はなく、上記の合計時間に注意を払った上で、例えばバスケ部とサッカー部で3か月だけ入れ替えてみたりしたら、どうでしょうか。違ったスポーツに触れ、違ったコーチングスタイルに触れる機会は、子供達の心身の為にも、また人生経験としても+になるはずです。